「AO入試・推薦入試」は「総合型選抜・学校推薦型選抜」へ
共通テストや英語民間試験利用が話題の2021年度入試ですが、変わるのは国公立大学入試だけではありません。
私立大学の一般入試・AO入試・推薦入試も、大きく変化するんです!
全大学で《一般・AO・推薦》の名称と試験内容が変化!
現在、実施されている「一般入試」「AO入試」「推薦入試」の3つの試験。
センター試験に代わって共通テストが実施され始める2021年度に、この3つの試験が大きく変わります!
なお、この改革は文部科学省の指示のもと、全大学で行われるものなので、国公立大学・私立大学、どちらの入試にも影響します。
まず変わるのが、「試験の名前」。
それぞれ以下のように変化します。
・一般入試 ⇒ 一般選抜
・AO入試 ⇒ 総合型選抜
・推薦入試 ⇒ 学校推薦型選抜
さらに、名前だけではなく、試験内容も変化します。
それぞれ新しい評価方法が採用されるようになるんです。
一般選抜(元一般入試)の評価方法・変更点
①調査書・志望理由書等が活用される!
これまでの一般入試は、学力試験のみで合否を判定していました。
しかし今後の一般選抜では、学力試験に加えて、「調査書」や「志願者本人が記載する資料等」が積極的に活用され、評価されるようになります。
「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をより積極的に評価するためです。
なお、「志願者本人が記載する資料等」とは、以下のようなものを指します。
・エッセイ
・面接
・ディベート
・集団討論
・プレゼンテーション
・各種大会や顕彰等の記録
・総合的な学習の時間などにおける生徒の探究的な学習の成果等に関する資料やその面談
これに伴い、調査書や志願者本人の記載する資料等をどのように活用するのかということが、各大学の募集要項等に明記されるようになります。
ただし、「積極的に活用する」というだけで、義務化されているわけではありませんので、合否に影響するかどうかは大学の方針によって変わります。
志望校の募集要項をよく確認するようにしましょう!
②私立大学で出題内容の見直しがある可能性!
個別試験では、私立大学の一般入試を中心に、以下のような課題が指摘されています。
・出題科目が1~2科目に限定されている場合がある。
・記述式問題の出題を実施していない場合がある。(実施している場合でも、複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめる能力などの評価は十分でない。)
・「話すこと」「書くこと」を含む英語4技能を総合的に評価できていない。
これらの問題を解決するために、文部科学省は大学全体に対して、以下のような取り組みを行うよう推奨しています。
・「大学入学共通テスト」の積極的な活用
・テストの出題科目の見直し・充実
・記述式問題の導入・充実
・(英語の試験を課す場合)4技能の総合的な評価
大学側がどのくらい取り組みを行うかはわかりませんが、早めに対応できるように、度に、志望校の受験情報をこまめにチェックしておくようにしましょう!
総合型選抜(元AO入試)の評価方法・変更点
①学力を測る試験が必須になる!
従来のAO入試は、書類審査や面接だけでも合格することができました。
しかし、総合型選抜になると、調査書等の出願書類だけでなく、以下のいずれか一つの活用が必須化されます。
「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」をきちんと評価するためです。
・大学入学共通テスト
・資格や検定試験の成績
・大学独自の学力テスト
・小論文
・プレゼンテーション
・口頭試問
・実技
つまり、受験者の学力が測られるようになるのです。
面接や書類だけで合格を出してもらえることはなくなります。
②出願時期・合格発表時期が遅くなる!
総合型選抜では、出願時期が現在の「8月以降」から「9月以降」に変更され、合格発表時期も「11月以降」に延長されます。
早い時期に合格が決定することで、学習意欲が下がったり、高校教育と大学教育との接続が円滑に行われなかったりするというAO入試の問題点を解決するためです。
さらにそれに伴い、大学の入学前教育が、特に12月以前に大学入学手続をとった生徒に対して、より本格的に行われるようになる予定です。
「入学前教育」の内容は、大学側に何らかの課題を指示される場合もあれば、高校側から指導される場合もあります。
③受験者本人が書く資料が重視される!
総合型選抜は学校推薦型選抜と異なり、受験者自らの意思による公募制の入試です。
そのため、受験者本人が書いて提出する資料(活動報告書、大学入学希望理由書、学修計画書等)が積極的に活用されます。
資料に記入すべき内容や、資料の活用方法は、各大学の実施要項に提示されます。
なお、文部科学省は以下のような例を示していますので、このような内容を書くんだと意識しておきましょう!
文部科学省による「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告の改正について(通知)」の24~26ページにイメージ例が載っているので、確認しておくと良いかもしれません。
(外部リンク:「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告の改正について(通知)」)
【活動報告書の記入内容例】
○「総合的な学習の時間」等において取り組んだ課題研究等
○ 学校の内外で意欲的に取り組んだ活動
・生徒会活動
・部活動
・ボランティア活動
・専門高校の校長会や民間事業者等が実施する資格・検定等
・その他生徒が自ら関わってきた諸活動
・各種大会・コンクール等
・留学・海外経験等
・特色ある教育課程を実施する学校における学習活動等
【大学入学希望理由書・学修計画書の記入内容例】
・志望する大学・学部等の教育内容を踏まえた入学希望理由
・大学入学後に学びたい内容
・大学入学後の学習計画
・大学卒業後を見据えた目標等
学校推薦型選抜(元推薦入試)の評価方法・変更点
①学力を測る試験が必須になる!
学校推薦型選抜も、総合型選抜と同じく、以下のいずれか一つの活用が必須化され、受験者の学力が測られるようになります。
・大学入学共通テスト
・資格や検定試験の成績
・大学独自の学力テスト
・小論文
・プレゼンテーション
・口頭試問
・実技
今までの推薦入試は、ほとんど書類審査と面接の評価だけで合格が出されていたため、定期テストを毎回一夜漬けしていたとしても乗り越えることができていました。
しかし、これからは実力をつけていく必要があります。
②合格発表時期が遅くなる!
学校推薦型選抜では、合格発表時期が「11月以降」から「12月以降」に変更されます。
現在の推薦入試では、出願月と同じ11月に合格発表を行う大学が全体の42%を占めているのですが、この早い時期に行われる合格発表が、生徒の学習意欲を下げ、高大接続に影響を与えていると問題視されているためです。
さらにそれに伴い、大学の入学前教育が、特に12月以前に大学入学手続をとった生徒に対して、より本格的に行われるようになる予定です。
「入学前教育」の内容は、大学側に何らかの課題を指示される場合もあれば、高校側から指導される場合もあります。
なお、学校推薦型選抜の場合、合格決定後に大学入学までの学習計画を立て、その取り組み状況等を高校を通じて大学に報告するといった制度の実施も予定されています。
③推薦書の内容が見直される!
学校推薦型選抜では、学校長からの推薦書が大きく評価されます。
その点は従来の推薦入試と変わらないのですが、その推薦書の内容が変更されるんです。
今まで推薦書には、単に受験者の長所だけが記載されていました。
しかし今後は、
・入学志願者の学習や活動の成果を踏まえた「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関する評価
が必ず記載され、場合によっては、
・生徒の努力を要する点(その後の指導において特に配慮を要するものがある場合)
も記載されるようになります。
調査書の内容もボリュームアップ!
これらの改革にあたり、調査書の記載内容も変化します。
現在の調査書にある「指導上参考となる諸事項」の欄が拡張され、以下の①~⑥の項目になり、より具体的な内容が記載されるようになるんです。
①各教科・科目及び総合的な学習の時間の学習における特徴等
②行動の特徴、特技等
③部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等
④取得資格・検定等
⑤表彰・顕彰等の記録
⑥その他
たとえば、③の場合なら、部活動やボランティア活動等の具体的な取組内容・期間等が記載されますし、④の場合なら、資格・検定の内容・取得スコア・取得時期等までしっかり記載されるようになります。
また、現在の調査書の様式は、裏表の両面1枚となっていますが、この制限も撤廃されます。
取り組んできた事柄が多ければ多いほど、強みとしてアピールできるようになったんですね。
今後の入試は「普段の取り組み」が重要になる
2021年度以降の入試から、
「学力だけ」「調査書の内容だけ」「特別な活動の成果だけ」
で合格できる「だけ受験」は終了です。
難しいことではありますが、普段から着実に定期テストの点数を取り、実力を身に付けながら、部活や留学、ボランティアなどの学内・学外活動に積極的に参加しましょう。
これからは「主体的」で「総合的」な能力が、合格のチャンスを広げていきますよ!