教員採用試験の競争率低下中
志のある受験生は積極的に挑戦してもらいたい
近年、就職環境は良好である。それにともなって教員採用試験の受験者は減っている。来春採用の2018年度は約14万5千人で、前年度より2万人近く減少している。(自事通信社調べ)近年の受験者数のピークは景気が低調だった13年度で約18万1000人、その後は毎年減り続けている。就職環境が好転によって一般企業へ就職する学生が増えたことがうかがえる。
団塊の世代の退職にともなって教員採用数が増加している中での受験者数減少なので、競争倍率の低下は顕著である。以前は6倍を超えていた競争倍率が、17年度は4.9倍であった。18年度も同水準で推移しそうである。
中学、高校の教員志望者の中には文学部や理学部など教育学部以外の出身者も多いので、景気が良好な時には一般企業に流れる傾向はある。しかし、小学校の教員志望者は景気に左右されにくいはずであるが、近年の小学校教員の競争倍率が全国平均で3倍台とかなり低調である。
また、地域によってのバラつきもある。16年度の小学校教員の競争倍率は、最も高い鹿児島県の10.1倍に対し、最も低い山口県と高知県では2.2倍と大きな開きがある。したがって、それぞれの自治体の国立大学の教育学部における、教員就職率を確認すると山口大学や高知大学はそれぞれ71.6%、75.3%であるのに対し、鹿児島大学は49.5%と実績は大きく異なるので、教員就職率の数字だけで各大学の本当の教員養成力を見極めることができないことに留意しておく必要がある。
さらに、競争倍率の低下を背景に、教員採用試験では人物重視の選考傾向が強まっている。面接の配点を高くすることで、教員に必要な適性や能力、意欲を持つ人を厳選するのである。
そのため、各大学では、筆記試験対策だけでなく、学生の資質を伸ばす教育に力を入れている。
とにかく、採用試験に合格しやすい近年の状況は、ほんとうに教員になりたい学生にとっては歓迎すべきことである。
先の見えない時代となり、教育の重要性が増している。また、現存する仕事の多くがAI(人工知能)に置き換えられるといわれているが、教育が人間に代わって、AIが担うようになることは考えられない。教育には人を育てるという魅力とやりがいがある。拘束時間の長さなどが指摘されているが、負担軽減の取り組みが始まっており、今後の労働環境の改善も期待できる。
教員になるための最初のハードルである大学入試もそれほど高くない。国公立大学の教育学部の入試倍率も全体的に低下傾向にある。私立大学の教員養成系学部の新設も続いている。ほんとうに教員になりたいという志のある人は積極的に目指してほしい。
(サンデー毎日 9/10号よりの抜粋)