産近甲龍の入試が難化!?中堅私大の倍率は約20倍!【2019年私立大学入試】
昨年に引き続き、2019年も私立大学一般入試の状況は厳しいものでした。
ここ数年、私立大学は入試の倍率が上がる「難化」が指摘されているのですが、「今年もさらに難化した」との声が教育関係者から上がっています。
そして驚くことに、倍率が上がった私立大学は「産近甲龍」「摂神追桃」といった中堅私立大学や、偏差値50以下の大学なのです。
私大入試の難化には、
・文部科学省が進める「入学定員管理の厳格化」
・指定校推薦やAO入試・推薦入試を利用して合格した受験生の増加
という2つの原因が考えられます。
文部科学省が進める「入学定員管理の厳格化」とは
まず、難化の原因の一つに、文部科学省が進める「入学定員管理の厳格化」があります。
文部科学省は【大学が定員を大幅に超過して入学させた場合は「私立大学等経常費補助金」を交付しない】というルールを設け、この超過率の基準を2016年から段階的に引き下げてきました。
私立大学は、補助金がなくなると経営に大きな影響が出るため、何としてもこの文部科学省が定める合格定員を守らなければならなくなったのです。
もともと、私立大学は国公立大学合格などによる入学辞退を見越して、定員より多めに合格者を出していました。
しかし、その定員が「入学定員管理の厳格化」によって確実に守られるようになったため、以前よりも合格人数が実質減ってしまったのです。
2019年の合格定員は前年と同じ基準だったため、今年は難化に歯止めがかかるのではないかと期待されていました。
しかし、今年はなんと、志望校に受からないばかりか、大手予備校の模試でA判定が出ていた大学にも全く受からないケースが続出しました。
特に「産近甲龍」でそのようなパターンが多く見られたのです。
「産近甲龍」「摂神追桃」倍率急上昇の実情
今年、産近甲龍に多くの合格者を出した高校を確認してみると、これまでは見られなかったトップ進学校の名前が現れています。
例えば、三国丘高校。
三国丘高校は偏差値にして73の高校です。
これまで、産近甲龍の合格者は多くありませんでした。
しかし、今年は近畿大学に138人の合格者を出しています。
これは、同志社大学の合格者数を上回る数値です。
以下の表は三国丘高校の同志社大学と近畿大学の合格者数を3年分まとめたものになります。
2019年 | 2018年 | 2017年 | |
---|---|---|---|
同志社大学 | 126 | 151 | 140 |
近畿大学 | 138 | 50 | 74 |
三国丘高校は、皆さんご存知の通り、東京大学にも合格者を出す、大阪府トップ校です。
つまり、近年の私立大学の難化を受けて、こうしたトップクラスの高校の生徒も「すべり止め」で受ける大学を増やしたため、三国丘高校は、近畿大学に大量の合格者を出したのです。
その結果、トップ進学校の合格者によって定員が圧迫され、本来「産近甲龍」を目指していた受験生が不合格になるという事態が起こったのです。
その傾向が全体に表れているのか、いわゆる「摂神追桃(摂南・神戸学院・追手門学院・桃山学院)」の難易度も上がっています。
2018年度と2019年度の倍率を比較した以下の表をご覧ください。
大学 | 学部 | 2019年度の倍率 | 2018年度の倍率 |
---|---|---|---|
摂南大学 | 経営 | 19.5 | 4.9 |
理工 | 12.6 | 4.6 | |
神戸学院 | グローバル・コミュニケーション | 10.6 | 1.8 |
追手門 | 地域創造 | 24.7 | 11.6 |
これらは中でも顕著な例ですが、受験者数がかなり増えており、難易度が高くなっていることが読み取っていただけると思います。
難化は「摂神追桃」より偏差値の低い大学でも起きています。
受験生が以前よりもすべり止めの大学を多く受けるようになったため、どの偏差値帯も簡単に受かるという状況ではなくなってしまっているのです。
指定校推薦やAO入試・推薦入試を利用して合格した受験生の増加
私大入試難化の2つ目の原因として、今年は例年以上に指定校推薦やAO入試・推薦入試を利用して合格した受験生が多かったということが挙げられます。
私立大学の一般入試が難化していることに不安を感じた受験生たちが、受験すればほぼ100%合格できる指定校推薦で、確実な現役合格を狙ったのです。
今までは、偏差値で中堅から下位の大学は、推薦枠があっても受験する学生が少ないという状況にありました。
しかし、その推薦枠を利用する受験生が増えたことで、その分一般受験での合格者数を減らさなければならなくなり、その結果、偏差値で中堅から下位の大学でも、一般受験は狭き門になってしまったのだと考えられます。
「浪人したくない」という気持ちから安定志向へ
多くの受験生が指定校推薦やAO入試・推薦入試を利用するようになった原因として、2021年に控えた大学入試改革の悪影響が出始めているということが挙げられます。
大学入試は2021年の試験で、「大学入試センター試験」に代わって「大学入学共通テスト」が導入されます。
英語では外部検定試験の導入も始まります。
つまり、来年の受験生は、翌年から受験の制度が大きく変わるため、「浪人したくない」という思いが強いのです。
その傾向が、すでに今年の受験生にも見られたのでしょう。
ある進学校では、一般入試で受験した特進クラスよりも、指定校推薦やAO入試などを積極的に活用した一般クラスの方が進学成績を上回る、というケースもあったのだそうです。
今後、指定校推薦やAO入試の枠は更に増えていくと考えられますので、来年の一般入試はさらに難化すると考えたほうが良いでしょう。
ただ、一般試験を受験するなら、厳しい状況を理解した上で、志望校の合格に向けて勉強していくべきです。
確かに私大入試は難化していますが、どの偏差値帯の大学も難化しているため、例えレベルを落として受験しても、偶然その大学の倍率が物凄く高くなっていてまさかの不合格・・・という展開も大いに有り得るのです。
安全策ばかり考えて入れる大学を選ぶよりも、自分が入りたい大学を選んでチャレンジした方が良いのではないでしょうか。
今年の受験生は「追加合格」に注意
ところで、入試はほぼ終わりを迎えましたが、志望校に合格できなかった受験生も、3月末までは追加合格の可能性があります。
私立大学では昨年から補欠合格が多く出るケースが目立っています。
すべり止め受験が増加した分、入学辞退者が増えているのです。
補欠合格候補者の通知をもらっている人はもちろんですが、大量に入学辞退者が出た大学では、補欠合格の候補者になっていなくても追加合格するケースがあるのだそうです。
昨年にも増して難化が進んだ今年は、大学が補欠合格候補者を多めに出している可能性もあります。
合格を通知する方法は、大学によって違います。
電話をかけてくる大学もあれば、郵送やメールで連絡が来る場合もあります。
昨年は、追加合格を出したものの、届いた郵便物を放置していて気づかなかった受験生もいたのだそう。
過度な期待はできないにしても、補欠合格や追加合格の可能性は頭に入れておいた方が良いですね。