●関西大学 全体講評(地理)
出題範囲・傾向
地理の問題作成にあたっては、高等学校の教科書・地図帳に準拠することを心掛けている。
文章間題・地図を使った問題・統計表で考える問題などの問題の種類や、選択・正誤式等の出題形式などを考慮しながら、1セット4問からなる問題を合計で28問作成することになるので、出題範囲は地理のほぼ全分野に及ぶことになり、セットごとの傾向の差は見られない。
したがって、受験勉強に際しては、個別の分野に偏ることなく、地理の全範囲に及ぶ基本的な理解と広い視野を保持するように努めてほしい。
世界史・日本史との格差
1982年の現代社会の登場以降、地理、公民、政経の教育的価値が希薄化し、2003年以降、世界史のみが必修となって、地理教育の軽視が全国的に進展してきた。
そのためもあってか、地理の学力は低下傾向にある。
入試間題の作成においては、難問・奇問を避けることに留意したうえで、重要な基礎的事項を問う問題、統計問題等の応用問題、地図上で地理的事象の理解を問う問題など適度のバランスを保つように努めているので、受験生諸君のいっそうの努力を望みたい。
2022年度からは、高等学校で「歴史総合」とならんで「地理総合」の必修化が実施される。
今後、高等学校での「地理」の重要性が高まることが予想されるのは望ましいことであり、地理の学力の向上が期待される。
今回の試験結果から指摘できる受験生の課題
地理的事象と地図とが連動した問題に弱いこと、また現代の世界や日常生活と直結した地理的知識・情報の理解や把握が不足していること、言語・宗教・民族を組み合わせて考える力の不足などが挙げられる。
特に撮近の傾向として、地誌的知識、とりわけ日本地誌に関する知識が不足していることを挙げなければならない。
地誌は単なる暗記として認識するのではなく、地球上の諸事象を理解するうえで、極めて重要であることを肝に銘じてほしい。
「あたりまえ」を大切に
さらに、いわば一般常識の範囲内であると思われる問題や、すでに小学校や中学校で学んでいるはずの事項に関する正答率の低さが顕著となってきたことも課題である。
例えば、日本の基本的な地名や地誌的傾向を知らない受験生が目立つほか、問題として取り上げた地域のイメージを類推して正答を導く必要がある、いわば地理的センスを問う問題に弱い。
こうした欠点の克服には、日頃から地図帳をながめて、地域の位置や地理的事象の分布などを確認する癖を身につけることが必要であろう。
また、現代の世界の出来事や日々の生活について、地理的見方で捉えてみることを習慣化することも重要である。
どのデータを信じるか
出題する統計の元資料は、『世界国勢図会』と『日本国勢図会』が主である。
受験生たちが使用する教科書や地図帳も両統計書またはその元になるデータを使っているので、教科書を信頼してよい。
出題する年次も高校1年で使用した教科書に掲載されている年次のデータを理解しておけば解ける問題を作成するよう配慮している。
統計数値は、世界や日本の社会や経済などの状況の変化によって、数年で大きく変わることもある。
その変化が、新聞やテレビなどの報道を通じて、君たち高校生が知りうるものであれば、入試問題に反映されることは多々あるので、現代社会の変化にも日頃、注意を払ってもらいたい。
出題者の悩み
教科書の内容は現状ではかなり多様で、使用している教科書だけを使って出題者が出題することは到底できず、教科書には出ていない統計データが問題に現れることは多々ある。
出題者はそういった状況も考慮しつつ、できるだけ教科書の学力があれば推理して解けるような問題を作成するよう努力している。
最後に
問題の形式と解法
ここ10年ほど、「最も不適当なものを選べ」という設問形式が増えている。
これは、「最も適当なものを選べ」よりも難しく、すべての選択肢の理解が必要だからであり、限られた設問の中で受験生の学力を知る手法であることを理解してほしい。
隣接する問いでこの「不適当」と「適当」の問いかけの方法が混在することもよくある。「不適当」の方は問題文の該当箇所を太字で示しているので注意してほしい。
・注意喚起
設問に「①のみ正しい場合にはアを、②のみ正しい場合にはイを、①、②とも正しい場合にはウを、①、②ともに誤っている場合にはエをマークしなさい」、という正誤問題形式の問いがここ10年ほど増えてきた。
これも前の例と同様の理由である。ア~エの意味を念頭に置きつつ問いに答えるのは難しいので、まずは選択肢の正誤を○×して、そのうえでア~エの解答を求める手順が必要である。
・よくある悩み
マークシートの自らの解答を見たときに、イが連続3個並んでいると誤答が含まれるのではと考えるであろうが、出題者はそういった配慮をしようとしても結果的にそうはならないことも多いので、マークの並びを気にする必要はないこともつけ加えておきたい。